■ 期待値とは
バックギャモンでは良く、エクイティという言葉が使われます。
英語で書くと、Equity ですが、辞書で引くと「公平、純資産」などと書かれていて??となります。
バックギャモンで言う、Equity は、一般に数学の確率論の期待値(Expectation)を指しています。
期待値とはなんでしょうか?
同じ技量のバックギャモンプレイヤーが二人いた場合、ゲーム開始時の期待値は0になります。
0という数値はどこから来たのでしょうか?
期待値は「起こりえる事象とその確率を掛けたものを全て足したもの」です。
話を単純化するために、キューブもギャモン(バックギャモン)勝ちも無いこととします。
つまり、バックギャモンというゲームは勝つと1点もらえて、負けると1点とられるゲームと仮定します。
同じ技量ですから、どちらのプレイヤーも勝率は50%です。
起こりえる事象は、1点勝ち(+1)と1点負け(-1)で、それぞれの確率は50%つまり、0.5です。そこで次の計算となります。
(1 × 0.5) + (-1 × 0.5) = 0
もし、技量に差があって、片方の勝率が60%とすると
(1 × 0.6) + (-1 × 0.4) = 0.2
となります。
期待値がプラスということは、有利であると言うことと同義になります。
もし、片方の勝率が100%だと計算は省略しますが、期待値は1になります。
これから、期待値は、-1~+1の間で変化することが分かります
■ キューブアクションが絡む場合の期待値
以下のポジションでキューブの有無による白の期待値を計算してみましょう。
添付ファイル:
25.jpg [ 22.67 KiB | 閲覧された回数 15310 回 ]
キューブがない場合、白は19通りで上がれます(知らない人はちゃんと数えましょう)。
上がれなかったら負けです。
(1 x 19/36) + (-1 x 17/36) = 2/36
キューブが2倍の場合は以下の通りです。
(2 x 19/36) + (-2 x 17/36) = 4/36
キューブを2倍にした場合に増えたのは
4/36 - 2/36 = 2/36
ですね。
添付ファイル:
22.jpg [ 22.63 KiB | 閲覧された回数 15310 回 ]
白は11以外の1がらみで上がれません。逆に言うとそれ以外は上がれます。
白の上がれる目は26通りです(知らない人はちゃんと数えましょう)。
以下の通りになります。
(1 x 26/36) + (-1 x 10/36) = 16/36
(2 x 26/36) + (-2 x 10/36) = 32/36
キューブを2倍にして増えたのは
32/36 - 16/36 = 16/36
どちらのポジションも期待値はプラスで、キューブを2倍にすることで儲けも2倍になります。
が、前者は 2/36 しか儲けが増えていませんが、後者は 16/36 も儲けが増えています。
どちらのポジションも黒側から見ると勝率25%以上あるので、ダブルされたらテイクです。
どちらも正しいダブル・テイクポジションなのに、後者の方がキューブアクションによる儲けが多いわけです。
これを一般に
前者は 弱いダブル
後者は 強い(効果的な)ダブル
と言います。
もしあなたがこのポジションのどちらかを選んでダブルを打てるとしたらどうしますか?
当然後者を選びますよね?
バックギャモンをプレイするとき、出来るなら、後者タイプの強いダブルを打ちたいな~と意識することは
とても重要なプレイ方針のひとつになるわけです。
■ 何故、キューブの位置によって、ムーブが変化するのか?
ある局面でAとBの二つのムーブがあったとします。
ムーブAは相手がどんな目を振ったとしても、勝率が70%あるとします。
安定して有利を保つムーブと言えるでしょう。
ムーブBは相手の出目により、70%の確率で勝率100%になり、30%の確率で勝率が0%になるとします。
こちらは、相手の出目によって、大きく勝率が変動するアグレッシブなムーブです。
ムーブAの期待値は
1 x 0.7 + -1 x 0.3 = 0.4
ムーブBの期待値も同じです。
従って、期待値の上からは、どちらのムーブを選んでも同じです。
しかし、キューブアクションが絡んだ場合、安定したムーブの選べば次に、強い(効果的な)キューブを打つことができます。
これは、イコール、期待値を上げることです。
ところが、ムーブBの場合、次の手番で、キューブアクションをすることは出来ません。
もう、勝負が付いてしまっており、キューブアクションのタイミングが無いからです。
(キューブアクションしてもパスされるか、不利(負け)なので、キューブアクションできない)。
両方のキューブアクション込みの期待値を計算してみます。
ムーブA
2 × (0.7-0.3)= 0.8
ムーブB
1 × (0.7-0.3)= 0.4
ムーブAの方が(キューブが2倍になったので当然ですが)期待値が2倍になります。
この考えに基づき、次の格言が生まれます。
(1) キューブアクションが可能で、有利な場合は、保守的なムーブを選ぶ。つまり、自分が有利な時は穏やかな展開を続けていった方が適切なダブルポイントを迎えやすいということです。
(2) 逆に相手がキューブアクションが可能で、自分が不利な場合は、アグレッシブなムーブを選択して、スイングを過激にし、相手に適切なダブルポイントを与えない方が得するということです。
次の問題を考えてみましょう(なお、ロール前、ダブルじゃないの?というエキスパートの方がいらっしゃると思います。はい、ダブル・テイクポジションですが、練習問題と言うことでそこは目をつぶって下さい)。
添付ファイル:
54.jpg [ 24.19 KiB | 閲覧された回数 15310 回 ]
1. XG Roller++ 6/1 5/1 eq:+0.562
Player: 69.03% (G:2.36% B:0.01%)
Opponent: 30.97% (G:2.57% B:0.06%)
2. XG Roller++ 8/3 5/1 eq:+0.536 (-0.026)
Player: 68.38% (G:2.36% B:0.02%)
Opponent: 31.62% (G:2.19% B:0.04%)
3. XG Roller++ 6/2 6/1 eq:+0.524 (-0.038)
Player: 68.05% (G:2.45% B:0.01%)
Opponent: 31.95% (G:2.54% B:0.05%)
4. XG Roller++ 8/3 6/2 eq:+0.510 (-0.053)
Player: 67.69% (G:2.65% B:0.02%)
Opponent: 32.31% (G:2.54% B:0.08%)
5. XG Roller++ 8/4 6/1 eq:+0.507 (-0.055)
Player: 67.68% (G:2.52% B:0.02%)
Opponent: 32.32% (G:2.55% B:0.09%)
6. XG Roller++ 13/9 13/8 eq:+0.421 (-0.142)
Player: 70.01% (G:4.22% B:0.03%)
Opponent: 29.99% (G:1.72% B:0.04%)
この問題の肝は
6.の 13/8 13/9 と 6/1 5/1 に代表される安全プレイの比較です。
13/8 13/9 とやると次にヒットされなければほぼ勝ちでしょう。逆にヒットされるとほぼ負けとなります。
つまり、期待値のスイングが激しい、過激なプレイなわけで、次の黒の出目次第で勝負がほぼ決まります。
それに対し、安全プレイの場合、黒の殆どの目に対して、白は勝率 70%程度を維持しており、次に効果的なキューブを打つ下準備をしているというわけです。