いろいろ言ったので、自分なりのまとめをPostしておきます。
まずはじめに断りますが、発表者の小野さんをおとしめる意図は本意ではないということです。「主張内容」と「主張している人の人格」は全く別です。理系の研究室にいたことがある方は研究室の輪講での駄目出し(悪夢・・・)を思い出した方が多かったのではないでしょうか。
さて、バックギャモン学会では、いろいろなタイプの発表があります。プレーの技術に関わるもの、バックギャモンの歴史、お話、等であります。(個人的には、バックギャモンをなにも知らない人に教える技術の話があってもいいと思っていますが、これはまた別のpostで扱いましょう。)
プレーの技術に関わるものでも、よく知られている技法・知識を初中級者に伝える話から、いまだ誰も考えたことがないコンセプトを提案するものまで非常に違いがあります。今回の小野さんの発表は、後者に近く、個人的に研究して知っている人はいるであろう(後で聞いたら西川氏は調べていたらしい。)が、印刷物やweb siteで体系的に記述されているとは思えない知識でした。
つまり発表内容の選択の時点で、ほぼ上級プレーヤ向けな訳です。中級者だったら、「456に載せるのがベスト」と「66で割れないようにbear inする」を知っていれば十分すぎます。
show and tellや発表会では無く、「学会」を名乗っている以上、満たしてほしいレベルというものがあるわけです。そのレベルとは、発表している内容は、どの部分が新しいのか、どういう価値があるのか、どうして正しいといえるのか、どういう手法で調べたのかなどなどが明快に伝わる必要があるわけです。
Abstractのようなものを書くとすれば、「1ptマッチではmoney game等とは違い、勝率がすべてである。今回の発表では1pt matchで相手のcheckerを1枚close outした場合に、スペアがどのように配置されていると一番勝率が高いかを説明します。そのスペア配置は、一般的なclose outの状況では456に配置するとよい、といわれていることとは異なっていて、344だった。」とかだろう。
ただ要旨で指定される範囲だと、あまりうれしくなくて(誰得?)、それはどうしてかと言うと、「66で割れないようにbear inしていく」が解決する状況を、この結論では直接解決できないためです。言い換えると、複数のチェッカープレーが選択可能な時にどちらを選んだら良いかが決まりにくい、ということです。この辺問題は、発表の範囲と目標を決めるときにだれかに相談するなどして検討していれば避けられたのではないかと思います。この辺は、景山さんの発表をみると、よくわかります。景山さんの発表は、結論が「プレーするためのルール」3つに落とし込まれています。ただ、仕事量があきらかに増えるので、スタッフとしての仕事とのかねあいもあったでしょう。時間労力的にできない場合は、「今後の研究」に含めるおけばよいでしょう。
次に、スペアチェッカーの配置はどうするのが良いのか?という調査のレベルの話になってきます。「6カ所に3つおけばいい」という話なので、過去にこの掲示板でpostされた
数学の問題という話がありましたが、これと全く同じです。問題定義を見たときに、何通りあるのか?を考えようとしない、ということ自体、かなり問題です。仮に100万通りあったとしたら調査が終わらないですよね?また、全数を把握していないと、「漏れ無し被り無し」の調査ができているかどうか確信が持てないですよね?この点を押さえていれば、配付資料に57個のデータを載せて、聞き手を深刻な不安に陥らせる可能性は無くなるのです。(組み合わせの話をしているのに奇数って変だと思いませんか?組み合わせってたいてい連続した数値を掛け合わせて総数を求めることが多いので、奇数になるって何か特殊なことをしているとしか思えない。)
組み合わせの数が違っている、ということは配付資料をもらったときに気づいて、木枝さんにも独立で検算してもらって間違っているということに確信が持てたので、mochyに伝えました。もしかしたら発表前に伝わっていなかったのかもしれませんが、伝わっていたならば、発表のはじめに、資料の訂正を口頭で伝えるというのが良いと思います。間違っている情報の訂正を速やかに行うことは、聞き手の信頼を勝ち取る上で重要なことです。
段々詳細な話題へと下って参りました。どのようにすればデータを再現できるか?を書く話ですが、1ptマッチであることは当然のこと、このときに使ったソフトウェアとそのバージョン、ロールアウトの回数、打ち切りの設定等は必ず記載すべきです。口頭で述べる必要はないですが、今回の配付資料の程度でデータを載せるならば、書くべきです。
話のまとめ方ですが、負ける要因が2つあって
1) 5ptなり6ptなりがあいた瞬間に飛び出されてぞろ目連発されて負ける。(レース負け)
2) 割れて打たれる(コンタクト負け)
です。それぞれがどのように寄与するのかを提示する必要があるわけです。4つの種類のpositionを提示すればすむ話ですが、聞き手としてはreference position1ですませたいわけです。ちょうど1)と2)が同じになるpositionを提示すればそれよりボードが堅いならば安全に、柔らかければボードの堅さを維持するプレー(654系)を選択するという形でまとめるほうが使いやすいのではないでしょうか。
もし344が割れにくいためにコンタクト負けしないと主張するなら、344がなぜ割れにくいのかという説明をしてほしかった。61-Dance-56で割れる展開が見えるだけに。
精度についてですが、勝率の数字が小数点以下2桁書かれています。普段のbackgammonでのプレーの善し悪しは期待値で語られていて、50(0.050)だと大分悪い、などと言われています。これは勝率に換算すると2.5%(+1.000と-1.000を100%で分配)で、勝率.1%というのは期待値でいう2に相当するわけです。普段ボットをさわっていれば10くらいの精度はあるだろうけど、それ以上の精度(正確度)がある状況は限られていると感じているはずです。
なにが言いたいかというと、a) そもそも精度として小数点以下2桁も必要なのか? b) 仮にロールアウトの試行回数が統計的に十分な回数あったとして、ベースとなるbotのプレーがそのレベルで正確なのか?(高精度)ということです。参考:
正確度と精度
b)に関して、どう考えているか、ということを言及せずに正しいと主張するのはまずいです。
プレゼンの自体について:
a) 一度に聞き手が把握しなければならないことを減らす。3つpositionを入れるより2つのposition、2つのpositionより1つのpositionだけを入れてそれを説明することに集中した方がよいでしょう。
b) シートを戻さない。同じ内容でも必要なら何度でも入れる。
c) 練習する。間違った内容が入っているのは論外。
d) 文章を入れない。キーワードを列挙する。文章を入れると聞き手は読もうとするから
ギャモン界には大学関係者が多数いらっしゃって、この内容では変・不足だと思われる方もいると思います。その場合は忌憚ない指摘をお願いします。
長文最後まで読んでくださってありがとうございました。