home  「Jリーグ発足秘話」その二 by 長谷川 俊介

 白石氏のことを紹介すると、彼は学者(北海道の某大学の講師)であり、また、青年実業家(空飛ぶ謎のインテリア)でもあり、そして、アメリカにおいてインタミディエイトでの優勝経験のある立派なギャモンプレ−ヤ−である。ビル・ロバティとも交遊があるらしい。
 我々はこの珍客を毎晩もてなした。夜の十時迄は三桂クラブで、それ以降はブラックサンに移動する日々が十日程過ぎた。彼はあまりシュエットに慣れていなかったので、下平氏と交代でポインマッチを行った。

 新しい連盟の運営方法について、彼と話しているなかで、彼は「レーティング」によっ てアメリカでは評価されていると言った。
 私には聞き慣れない言葉であったが、宮崎氏は知っているらしく、アマ将棋の世界で行われているとのことであった。

 レーティングとは、元来は、チェスの世界で考案されたものらしい。
 持ち点によってハンディが付くために、実力差のあるものどうしで行われたゲームでも、意味のある記録として残せ、その積み重ねによって、運の要素を抑制し、客観的にプレーヤーの評価ができるという仕組みである。

 我々は、これだと思った。
 しかし、白石氏の話によると、海外では、やはり、運の要素を少なくするために、ロン グレンジのポイントマッチ(十五ポイント以上)しかカウントしていないとのことであっ た。
 そのままのスタイルを日本で行うには、無理がある。
 日本では、ある程度経験のあるプレーヤーでも、十五ポイントマッチの経験はほとんど ないし、仮に実施しても、時間がかかりすぎて気軽に始めることはできない。飽きてしま う。まして、初心者にやれということは非現実的である。

 宮崎氏がアマ将棋ではどう適用しているかを調べてきた。それによると、公式戦三十試 合以上行わないと、公認にはなれない。

 十五ポイントマッチ三十試合。殆ど意味がない。できるわけがない。
 ギャモン人口を増やすこと。これが第一の目標である。だれが真の日本一かを決めるのが目的ではない。
 初心者、初級者が入り易い方法でなければ普及のためにならない。厳しいルールに耐えられるプレーヤーは既にギャモン界に定着している人であり、特にケアーしなくても構わないじゃないかということで、もっと少ないポイントのポイントマッチから始めることになった。

 では、何ポイントマッチが適当か。
 一般に、ポイントマッチは奇数点のマッチで行われる。三点か五点か七点か九点かそれとも十一点か。
 私は、七点がいいと主張した。やるからには勝ちたい。自分は上級者であるという思い込みもあり、少しでもポイントの多い方が、運の要素が減り勝つ確率が高くなる。
 つまり、三点や五点では、不慮の事故で四点失ったら終わりであると思った。また、九点以上はやはり初心者には無理である。
 古川氏は三点を主張した。短ければ短いほどよいというのだ。
 基本的にミーティングは、現在と同じように居酒屋で行われている。古川氏の発言は基本的に聞き流されることになっている。
 宮崎氏は五点がよいという。長ければ、上級者が有利というのは、あまり意味がない。
日本人はみんなへぼなんだから。下平が十一ポイントマッチで勝ったのを聞いたことがない。五でも七でも所詮ジャンケンみたいなもんだから、短い方がいい。(事実、これ以前の数回行われた下北沢の大会では、下平氏は殆ど勝っていない)

 こうして五ポイントマッチに落ち着いた。
 協会の日本選手権予選も五ポイントから始まるので、割りと抵抗なく行えるものと思われた。
 時間内であれば、五ポイントマッチのバトルを何回でも繰り返すことができるようになった。これまでのように、一回戦負けたら、その日は、はいさようならではない。また、全員のゲームが終わるまで待つこともなく、相手を見つけ次第ゲームを始めることができる。一日中ギャモン漬けになれるというわけだ。
 しかし、さすがに三十一倍層まではふれないので、当面は二倍層までにして様子をみることにした。
 現行の三倍層は、連盟発足から半年後に変更したものであるが、この時の経緯は別の機会にしたい。

 次は試合数の設定である。
 普及がキーワードであるため、ある程度の試合数を行う必要がある。しかし、毎回欠かさず参加しなければならないような仕組みではだめだ。暇があるときに、気軽に参加できる位の試合数がよい。  アマ将棋に倣って三十試合から公認記録とすることとした。
 この程度の試合数なら、二ヵ月に一回程度参加すれば、十分いける数である。連盟発足当初は、支部もないので、土浦や下田等からの参加者でも来れる環境作りが必要であると思われた。

 そして、タイトルの設定である。
 宮崎氏には既に案が出来ていた。つまり、現在行われている、三つのタイトル、「王位」「盤聖」「名人」である。
 ただレーティングをやりっぱなしではいけない。やはり、節目毎に目標がなければ、やる気を持続させることはできない。
 このとき宮崎氏はさらに、タイトル料の他に、対局料や地方の会員に旅費まで渡すべきだと言った。
 現在はまだ会員数が少ないために、対局料は支払われていないが、旅費に関しては、今回の王位戦から、招待選手の一部に支払われることになった。

 最後に、これが重要なことであるが、ギャモンの普及のためには、面倒見がよくなければならない。一度来た人をがっちり放さないための、アフターケアがなければいけない。
 つまり、会報の発行である。いつものミーティングのことではない。幽霊会員を作らないために、連盟から定期的に呼びかけることが大切である。
 毎月会報が来れば、自分の順位をみて、納得のできる人はあまりいないはず。基本的に一位意外の人間は皆そうだ。順位が悪いのはたまたま調子が悪かっただけだ。しかし、次に参加しないかぎりは、一点たりとも増えることはないのだ。このままでは世間に自分の実力がこんなものかと思われてしまう。

 確かに、順位が公表されることを恐れる人もいますが、殆どの人の勝率6割から4割の間にいます。まだ日本は、上級者だ初心者だのいうようなレベルにはなっていません。

 来週には何とか都合をつけねば、と思って頂ければ幸いです。

                  完


Copyright(c)2003 Japanese Backgammon League. All rights reserved.