home in a mirror    かがみのなか by 皆上強志


(1) ギャモン・セーブはレースの一種

 ギャモン率を知りたいことは、実戦でかなりあります。
 グラフ1は,クローズアウトのポジションをいくつかロールアウトしてグラフにしたものです。
 ギャモン・セーブは、自陣の6ポイントを着地点としたレースです。6ポイントにクロスオーバーするために必要なピップ数合計とギャモン率の間には、グラフ1のように、見えない線が浮かんできます。
 いっしょに、その線をつないでみましょう。

 推定したいギャモン率も、浮かんでくる曲線上にあります。
 80%あたりまでを大胆に直線として見ると、6ポイントまでのピップ数合計から18ピップ引いた値に2を掛けるという簡単な計算でギャモン率を概算できます。数式では、

G=(Q-18)×2〔%〕 …… 超概算式
Q〔ピップ〕:6ポイントまでのピップ数合計(58まで)

です。この超概算は、±7%くらいの精度と思います。

グラフで隣り合う2点のギャモン率をQで按分すると、この間のギャモン率を推定できます。また、点ごとのギャモン率と曲線の傾きから類似するポジションのギャモン率を推定することも実用的と考えられます。曲線の傾きは、Qの1ピップあたりギャモン率が何%増えるかを意味します。

 グラフをさらに注意深く見ると、浮かんでくる曲線から微妙に点がズレていることに気づきます。このズレの原因はギャモン・セーブのピップロスですので、これをうまく補正すると±3%くらいの精度になると思われます。
 それでは、ギャモン率と曲線の傾きを調べておいて、ギャモン・セーブのピップロスを補正することも試みながら、ギャモン率を推定する方法をご紹介しましょう。

図1
Q=40

勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
97.0% 46.7% 0.1% 2.7%

(2)推定例その1
 図1は、ミッドポイントに3駒残して1駒クローズアウトしたポジションです。(超概算ではQ=40なのでG=44%です。)
 この参照ポジションでは、●のギャモン率は約46.7%、○のQ1ピップあたり2.7%ギャモン率が変化します。
① 類似ポジションの選定と概算
 図1をもとに、図2のギャモン率を推定してみましょう。


図2
Q=44

 図2では、○6ポイントまでのピップ数合計Qは、4ピップ増えています。(超概算ではQ=44なのでG=52%です。)
図1との違いが、○のミッドの1駒が4ピップ後ろなら、 46.7%+2.7%×4ピップ≒58%
くらいという推定で、かなりの精度と思います。

ギャモン・セーブのピップロスとなる○の配置を補正してみましょう。ピップへの換算値は、私の推測値です。
② 1クロスオーバーに0.5ピップ加算
 図2の例では、○8ポイントの2クロスオーバが増えていますので、2倍して1ピップ加算してみます。
③ 7、8ポイントの2駒目以降は0.5ピップ加算
 8ポイントに2駒ありますので、0.5ピップ加算します。
④ 2から4ポイントのギャップは0.5ピップ加算

 図2では、図1の1ポイントの替わりに3、4ポイントにギャップがありますので、差し引き0.5ピップ加算します。
クロスオーバの着地点が、6ポイント、5ポイントになりますので、図2のようにクラッシュしたボードでも6ポイント、5ポイントはギャップとして数えないこととします。
 以上の②~④のピップ補正をすると、図2では、図1に
 4+(1+0.5+0.5)=6ピップ分の加算をして、
 46.7%+2.7%×6ピップ≒63%
のギャモン率と推定します。
⑤ 勝率全体に影響する要素の補正 
 相手のボードの状況は、勝率全体に影響すると考えて補正します。図2では、○がクラッシュしている分、負ける確率が2%程度減り、それに応じてギャモン率も約1%強(2%の63%は約1.2%)増えると考えられますので、最終的に、ギャモン率は約64%であると推定します。


図3

DMPの場合 (3)推定例その2

 図3は、1993年の英国チャンピオンPaul Lamford著"100 Backgammon Puzzles"(1999)の問4です。出題は、ポイントマッチで双方が最後ゲームとなるDMPとして設定されています。
 50ピップ以上リードしているため、レースでは負けがほとんどなく、DMPであればヒットする必要がありません。
 クローズアウトすると、66 55 44 65 64 63 62 の11とおりでブロットを発生し、ヒットされる確率が約10%あるので、DMPでは2駒上げます。
 図3を変形して、通常のセッションの場合は21をどうプレイすべきか考えてみましょう。
通常のセッションとした問題は、負ける確率とギャモン率の兼ね合いを考慮しなければならない一例となります。
実戦では、長考をしてでも、ギャモン率をできるだけ正確に見積もって判断する必要があります。

① 類似ポジションの選定とギャモン率の概算
21でクローズアウトした図4と○のミッドポイントに2駒残してクローズアウトした図5を比較します。
超概算式では、図4のギャモン率は、Q=31よりG=26%、図5ではQ=33 より G=30%になります。

図4
Q=31

図4は,図5と比較して、○の6ポイントにクロスオーバするピップ数Qは2ピップ少なく、図5の数値で概算すると、
26.5%-1.5%×2ピップ≒23.5%
くらいのギャモン率となります。

図5
Q=33
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
96.8% 26.5% 0.1% 1.5%

ギャモンセーブのピップロスを補正してみます。
② 1クロスオーバーに0.5ピップ加算
 図4を図5と比較すると、○13ポイントの1クロスオーバが減り、7ポイント、8ポイントに4駒ありますので、差し引き3クロスオーバの1.5ピップを加算してみます。
③ 7、8ポイントの2駒目以降は0.5ピップ加算
 ○7ポイントに3駒ありますので、1ピップ加算します。
 ミッドポイントの1駒と8ポイントの1駒は、7ポイントにある駒と目の使い方が重複する配置なので、更に0.5ピップずつ加算して2ピップ補正してみます。
④ 2から4ポイントのギャップは0.5ピップ加算
 図4では、図5の1ポイントのほかに2ポイントのギャップがありますので、0.5ピップ加算してみます。
⑤ スペアの配置による補正 
 ベアオフのピップロスを補正する方法として、1ポイントの3駒目以降は、2ピップ加算して補正するということがよく行われています。
ギャモン勝ちを狙う場合も同様のピップロスが考えられますので、4ピップマイナスして補正してみます。
 以上②~⑤のピップロス補正を加味すると、
 1.5+2+0.5-4=±0ピップ
なので、①のまま23.5%のギャモン率と推定します。
⑥ ブロット発生によるギャモン率への影響
 最後に、勝率全体に影響する要素を考えます。
図5と比較しますと、スペアの配置が悪く、ヒットされる確率が10%以上増えていますので、23.5%を0.9掛けして、約21%のギャモン率と最終的に推定します。
⑦ 21でクローズすべきかどうかの結論
 図3のように3ポイントにギャップがある形は、スペア配置が理想的であっても負ける可能性は約7%と思われます。
 2駒上げた形との比較では、今クローズアウトすることによって、負ける確率は約7%増えて約14%となる一方、ギャモン率は、○がダンスする3ロール弱相当の15%くらい(負ける確率の2倍強)増えると考えられます。
この形は,クローズアウトしてギャモンを狙うと期待値が高くなる「見えない線」をわずかに超えたところにあります。
 ○のピップQがさらに多ければ,安全なプレイよりもギャモン狙いを選択したほうが明らかに良くなります。


(4)minack流ギャモン率推定法のまとめ

 グラフ1の元となったクローズアウトポジションの勝率、ギャモン率、バックギャモン率、1ピップあたりのギャモン率を末尾に列挙します。精度を確保するために、GNU 0.14 と Snowie3 の2~3plyの1296回フルロールアウト(毎日1ポジションくらいのペースでした)の結果を平均しています。

推定の手順を振り帰ると、以下のとおりです。

① 類似ポジション(Qの差を7以下)の選定と概算
② ギャモン・セーブのピップロスを想定した補正
a) 1クロスオーバーに0.5ピップ加算
b) 7、8ポイントの2駒目以降は0.5ピップ加算
c) 2から4ポイントのギャップは0.5ピップ加算
③ スペアの配置や勝率全体に影響する要素の補正
a) 上がり側のロスはレースと同じピップ数を補正
b) ヒットの可能性,セーブ側インナーは勝率全体に影響
 実戦では超概算式と②③の補正を組み合わせて1%刻みの計算を小考で行うことも多いです。±5%程度の精度です。

 以上のギャモン率の推定方法は、クラインマン・カウントというレースの勝率推定法を応用した私の仮説をまとめたものです。まだまだ改善の余地がありますので、お気づきの点をお知らせいただければ幸いです。       【続く】
【図2、図4のロールアウト結果と「よくある質問の答え」:minack's HP
ご意見をよろしく minack@my.email.ne.jp】

図6
Q=19(図6の後に本文図5、図1が入ります)
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
97.7% 2.9% 0.0% 1.3%

図7
Q=43
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
97.1% 52.0% 0.1% 2.6%

図8
Q=55
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
97.6% 77.5% 0.0% 1.5%

 図9
Q=57
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
98.0% 80.6% 0.0% 1.3%

図10
Q=38
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
95.0% 43.7% 1.3% 2.2%

図11
Q=52
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
96.0% 73.7% 0.9% 1.7%

図12
Q=59>58
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
96.4% 83.4% 0.8% 0.8%

図13
Q=62>58
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
96.6% 84.8% 0.8% 0.8%

図14
Q=74>58
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
96.9% 92.3% 0.9% 0.4%

図15
 Q=57
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
95.1% 78.3% 6.0% 0.6%

図16
 Q=71>58
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
95.6% 89.2% 4.8% 0.4%

図17
 Q=81>58
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
96.1% 92.0% 4.7% 0.3%

図18
 Q=76>58(4枚クローズ)
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
94.1% 87.3% 21.3% 0.3%

図19
 Q=95>58(5枚クローズ)
勝率 ギャモン率 バックG率 1ピップあたりのギャモン率
93.4% 86.3% 39.6% 0.2%

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