2005 大阪オープン (2005年3月) By 永井一矢
 
 

2005年大阪オープンは、場所をうつぼ会館から大阪なんばワシントンホテルプラザに移しての開催となりました。 大会当日、人の多さにびっくりしました。初日は77人もの参加者がありクラスも今年から3つに増えました。 オープンは32人と去年とほぼ同じ規模でしたが、初中級クラスの参加者が大幅に増えました。 大阪オープンは最も出場回数の多いトーナメントで今回で4度目の参加になりますが、入賞したことはありません。

組み合わせ表を見ると、一回戦の相手はなんと望月正行さんです。 盤聖2期をはじめ数々のタイトルを獲得し、2003年のLas Vegasではオープンとリミテッドジャックポットのダブル優勝という 空前絶後の成績を収めた日本ギャモン界のスターです。マスコミにも多数取り上げられました。 一回戦の相手が望月さんというのは、最悪だと思いましたし、また同時に最高だとも思いました。 トーナメントでは過去に一度、王位戦のベスト8で対戦して負けています。

2ゲーム目、4キューブのレースを1枚差で勝つことができ5-0となりました。 そして6ゲーム目、不利なレースから大きな目を連発しこのような局面を迎えました。

11ポイントマッチ   永井(黒)7-1 望月(白)  黒の振り番 【図01】
 

 
時間を使って考えました。ラストロールということもあってリダブルし、望月さんもテイクしました。 そして振った目が66! 最高の出目を振ってこのマッチを勝つことができました。

2回戦の相手は西川清一さん。 第9回(2004年)大阪オープン優勝、第34回(2004年)日本選手権優勝、第8回(2002年)ジャパンオープン準優勝、 第8回(2001年)王位戦コンソレ優勝、第7回(2000年)王位戦優勝と 数多くの実績を誇る日本を代表するギャモンプレーヤーの一人であり、またディレクターとしても活躍されています。 トーナメントでは過去に一度、東京オープンのベスト8で対戦して負けています。

11ポイントマッチのオープニングゲーム、ホールディングゲームからテイクして普通に押し切られて、0-2。 しかしその後、テイクした後の出目が良く逆転できたのが3ゲームもあり、8-2となりました。 終盤お互いの残り時間がかなりきわどくなりました。最終ゲームは9-4からテイクし、やはり逆転勝ち。 キューブが大きい急所での出目の差がそのまま結果につながりました。

3回戦の相手は竹内慶人さん。 第9回(2002年)王位戦準優勝、第9回(2004年)大阪オープン準優勝 そして2003年のLas Vegasでの日本フィーバーではIntermediateで優勝されています。 掲示板やクラブでの活躍も有名で、普及にも大きく貢献されています。 日本選手権の予選で一度対戦していますが、トーナメントでの対戦は初めてです。

3-1で迎えた4ゲーム目、竹内さんがずっとダンスしている間に幸運にギャモンを取ることができて4点。 次のゲームは7-1のリーダーからダブルし、竹内さんもテイク。 途中リダブルが返ってきそうなところまで追いつかれましたが、逃げ切ることができて2点。 この2ゲームが大きく、勝つことができました。

準決勝の相手は中島利治さん。 トーナメントでは過去に一度、第10回(2003年)王位戦のコンソレーション決勝で対戦しています。そのマッチは中島さんが勝ち、コンソレーションで優勝されました。

今回の大会でこのマッチが最もタフで、そしてドラマチックでした。 13ポイントマッチの2-2から8点連取し10-2。そこで休憩となりました。 途中経過に意味はない、あと3点が大変なのだということは、嫌というほど分かっているつもりでした。 しかしここから猛追をうけ10-9になりました。迎えた13ゲーム目、テイクしたあと急所でのダンスが響き、局面は絶望的になってしまいました。

13ポイントマッチ   永井(黒)10-9 中島(白) 【図02】
 

 
ああ負けたと思う瞬間があると思います。僕もここで思いました。 しかしここからヒットチャンスが来たのです!

13ポイントマッチ   永井(黒)10-9 中島(白) 【図03】
 

 
「トーナメントでは、一回は、たとえばこのゲームを逆転するような幸運がないと優勝することはできない」 そう思いながら、振り出した目は42! しかし、喜びもつかの間54で脱出されてしまいました。この駒を逃がしてしまったら、ギャモンで負けの可能性が高いです。 しかしこの駒を、再びヒットすることはできませんでした。 残された道はギャモンセーブしかありません。そしてベアインでゾロ目を3回も振り、ギャモンセーブに成功したのです!

13ポイントマッチの10-11。ここで休憩となりました。 残り時間は、僕が12分、中島さんが4分強だったと思います。 JBLルールでは、持ち時間が無くなると相手に2点が加算され、代わりに5分が貰えます。 再び持ち時間が無くなると相手に1点が加算され、代わりに5分が貰えます。以後はこの繰り返しです。 4分で2ゲームは不可能です。 もしこのゲームで私が得点すると、最低でも11-11となり、次のゲームで2点貰いマッチを勝つことができます。 つまり中島さんはこのゲームを絶対に勝たなくてはいけません。 よって10-11のリーダーにもかかわらず、初手ダブルが正解になります。 ダブルされたら、もちろん僕はすぐにリダブルしますので、このゲームが事実上のDMPとなります。 ほんのさっきまで負けを覚悟していたのに、今はDMPのチャンスがある。休憩中はこのことがひたすら嬉しかったです。

再開後、やはりすぐにダブルがきました。テイク、リダブル。 途中、中島さんのクロックが落ち、12-11となり中島さんに5分追加されます。 このゲームは、ポイントメイクやバックマン脱出の良い目を多く振り、勝ちきることができました。 中島さんとの熱いマッチはこれで1勝1負です。3試合目もぜひやりたいですね。

決勝戦まで時間が空いていたため、食事を取りました。 食べ過ぎないように注意し、食事後はぶらぶら観戦などしていました。

初めてのメイン決勝です。 決勝の相手は西村詩さん。 今回の大阪オープンがトーナメント初参加とのことです。GamesGridでもあっという間に1900を超えていました。 観戦していても、とても落ち着いてプレーしているように見えました。

13ポイントマッチ   永井(黒)0-0 西村(白)  黒の16 【図04】
 

 
一ゲーム目、ここでは相手のブロットにからみつき、積極的にヒットチャンスを狙う22/16 が好手でした。 5ゾロの場合は大きく損をしますが、barメイクや5ptメイクに対抗することができます。 実戦でこのような手は、本当に分かっていないと選ぶことはできません。 試合中に勝負所とわかる場合もあれば、振り返ってわかる場合もあります。 10/4 8/7 としたため、その後ヒットチャンスを得ることなく2点を失いました。

13ポイントマッチ   永井(黒)4-4 西村(白)  黒の14 【図05】
 

 
0-2となったあと、1点きざみのゲームが続き4-4となりました。 4ptのブロットがなければ、または6ptのスペアがもう1枚あれば、迷わずヒットできたと思います。 しかしそれは小さな部分の話で、いま怖いのはプライムに閉じ込められる展開です。 最後のバックマンを攻め、フリーロールを奪う6/5* が絶対手でした。 リターンヒットされたほうが、アンカリングのチャンスが多いという意味もあります。 実戦では、プレッシャーがあると特に、局面を大きく見る姿勢に欠けてしまいます。 b/24 8/4 としてしまった後、西村さんの的確なプレーで局面は終盤を迎えます。 しかし・・・

13ポイントマッチ   永井(黒)4-4 西村(白)  黒の振り番 【図06】
 

 
この局面、6ゾロでヒットすることができますが、振ることはできませんでした。 しかし次の手番でクローズアウトすることができたのです!ここからの出目はクイズになるくらい奇跡的でした。

黒65  8/2 8/3
白43  7/3 6/3
黒66

普段は振る前に、つい悪い目ばかり見えてしまう性格なのですが(ここですと例えば4ゾロ)このときは6ゾロが見えました。 パズルみたいにきれいな6ゾロがあるんだなと思ったら、本当に振ることができました。クローズアウトし、リダブルパスで6-4となりました。 次のゲームでも1点を加え、迎えた10ゲーム目。(白)の西村さんの手番です。キューブアクションは?

13ポイントマッチ   永井(黒)7-4 西村(白)  白のキューブアクション 【図07】
 

 
少し攻めが薄いのが気になりますが、スコアも考えここがぴったりのタイミングでした。 鋭いキューブをギャモンで決められ4点。再び逆転されました。 そして、1点きざみのゲームが続き、15ゲーム目となりました。

13ポイントマッチ   永井(黒)9-10 西村(白)  黒のキューブアクション 【図08】
 

 
ここはきっと、ノータイムでダブルするところなのでしょうね。 バックマンの枚数、アウターポイントの状況の差が大きく、直ちに攻めきる展開はないですが手厚い攻撃が十分期待できます。 ここは随分長い時間考えた気がします。考えている最中は弱気になりがちです。 ギャモンはどれくらい取れるのか。インナーにスペアがない。相手のインナーも好形だ。などなど・・

結局ダブルを決断するのですが、ここはダブルはクリア、テイクパスが難しいところのようです。 テイクパスは意見が分かれるところで、Snowie4の解析でもほぼマージナルでした。正解はないと思います。 西村さんも悩んでいました。僕と同じくらいの時間を使って集中して考えていました。そしてテイクしました。 もし僕がノータイムでダブルをしていたら、もしかしたら違った展開になっていたのでしょうか。 実戦の勝負のあやは、こんなところにあるのかも知れません。 ここから振った目が3ゾロで一気に5プラを作ることができました。 そして、アンカーを取られる前に攻めきることができ、ギャモンを取ることができました。 西村さんは常に冷静かつ紳士的な態度で、対戦できたことを幸運に思いました。

勝ててうれしかったです。自分なりに勝てた理由を考えてみました。

1、参加したこと
2、さまざまな運に恵まれたこと
3、負け慣れしてきたこと

よく言われる話ですが1は大事ですね。トーナメントに参加するのは楽しいですし、一番の勉強にもなります。

そしてそのトーナメントに参加しプレーできるのは、ディレクターをはじめ多くのスタッフの尽力があってこそです。 ディレクター・スタッフのすべての皆様に感謝しています。 また東京での大会でいつもお世話になっている西川さん、望月さん、またスタッフの皆様にこの場を借りてお礼を言いたいと思います。 そして市川さん、景山さんをはじめ、研究会でお世話になった人達に感謝したいです。 最後に、大阪支部を支え、優勝をとても喜んでくれた中村さんにお礼を言いたいです。皆様ありがとうございました。