Next one is better one by 尾田 一良
 
 

喜劇王チャールズ・チャップリンにインタビュアーが質問した。

「今までの作品の中で、一番気に入っているのはどれですか?」
 
チャップリンは

「Next one is better one.」

(この次が一番だよ)

 
 

これは有名な話で、もう過去の作品より次の作品を期待してくれというのだ。この前向きというか常に前しか見ていないという答えがもの凄く好きで、自分のサイトにも「NEXT」というワードを使用している。

ある日、会社の同僚がJ-WAVEのDJ、ロバート・ハリスさんの本をカバンにしまうのを目撃してしまった。
「あ、この「エグザイルス」前から読みたいと思ってたんだよ、どうだった?」と聞くと、その同僚は「凄く面白いですよ、読み終わったら貸しますよ」と言ってから2、3日後に本を貸してくれた。
本は予想以上に面白く、凄く良かったと、その同僚と酒場で飲みながら「エグザイルス」の話をしていると、「あの本の中にでてくるバックギャモンって面白そうじゃないですか?」と聞いてくる。
「ん?面白そうだけど、オレ、ネクスト(NEXT)は好きだけどバック(BACK)は嫌いなんだよ、「Uターン禁止のハイウェイ」だからな、オレの生き方は。」と、ゲームに興味をもった同僚を簡単にあしらい、その日は終わったのです。

何日かすると「バックギャモン買ったんですよ。」と同僚。
正直、自分でも凄く興味があり、ではゲームで遊んでみようということになった。それから何日もその同僚相手にずうっと会社でゲームをしていたのですが、お互いど素人なので何度やっても勝ったり負けたりの繰り返しばかり。「これって単にサイコロで駒動かしているだけで、強い弱いってないんじゃないか?」とゲーム自体を疑っていたのでした。
そんな時に、FM局にいつも営業に行っている同僚の女の子が、
『今日、J-WAVEでロバート・ハリスさんに会って、「会社で、馬鹿みたいにバックギャモンばっかりやって仕事しない人がいるんです」って言ったのよ。そうしたらハリスさんに「ミケランジェロでバックギャモンやっているからつれてきな」って言われたよ。』
とのこと・・・。
びっくりして、「え!ロバート・ハリスさんに会えるの!?」。

ということで早速、代官山にあるカフェ ミケランジェロへ出かけていきました。
ハリスさんはその日、来られなくなってしまったみたいで、バックギャモン協会の人にゲームをしてもらうことになりました。が、何度やっても勝てず、なぜ勝てないのか、何が悪いのか・・・。
その日からバックギャモンというゲームの魔力にのめり込んでいったのです。
単なるサイコロの目だけで勝敗が決まるゲームでないということを悟った。いわば、ブッダの悟りを開いたときと同じ心境とでもいうべき日だったのです。

そんな感じで始めたバックギャモン。
GamesGridのことやSnowieのことなどいろいろ教わったのですが、そのソフトが自分の使用しているコンピュータ、Macintoshでは動かないというとてつもなく大きな壁にぶつかった訳です。
自分のサイトはMacのニュース系サイトなので、そんなHPを作っているのにWindowsを使用しているなんて知られたら、石かスパナを投げられるような御法度な出来事です。
でも・・・、バックギャモンで遊びたいし、強くなりたい。そう・・・。本当にMacって素晴らしいコンピュータなのにゲームに関してはぜんぜんダメなんです。で、とりあえず1万円で買ったMacのノートをYahoo!のオークションで6万円で売りさばき、Windowsをめでたく購入(忘れもしない最低なマックファンとなった日です・・・)。それからネットで毎日のようにバックギャモンばかりの日々がつづきます。
Windows Meが発売され、なんとそこにはバックギャモンが最初から入っているではないですか。その後に発売されたXPでもそうでした。一方、Macの方はというと、ゲームの存在すら知らない人が多く、自分のサイトでバックギャモンのことを紹介しても全く反応がない悲しい日々を過ごしていました。

ところが、なんとGamesGridのMacOSX版が突然発表されたではないですか!これでやっとMacでギャモンができるし、堂々と紹介もできる!
自分にとっては、昔の日本の「戦争は終わりました」とラジオから流れ、それを聞いた日本国民のような感無量の日だったわけです。
これが今まで一番望んでいた理想郷です。映画「ショーシャンクの空に」ではないですが、下水管の中を何時間も我慢して通り、やっと出てきた極楽の世界という感じです。(どのたとえもちょっと違うような気もしますが)

中野サンプラザで毎年開催されている日本最大のバックギャモンの大会「バックギャモンフェスティバル」に参加するようになり、3年が経ちました。年々バックギャモンプレイヤーが増えていくのが目に見えてわかります。
また、2002年10月、十数年ぶりにバックギャモンの本が発売されました。河出書房新社から発売された「バックギャモンブック」は予想以上の売り上げです。これもバックギャモンの人気が上がってきているのが感じられる出来事でした。

来年はマックファンにもどんどんバックギャモンを知ってもらって、ゲームを楽しんでくれることを願い、Macで遊べるバックギャモンのソフトやサイトをがんがん紹介していけたらと思っています。バックギャモンを気に入ってくれる人がいたら、大会の参加も勧めてみたいと思っています。
 
 

もしも誰かに、

「大会に出場するのはわかるけど、君は何か優勝したことあるの?」

と言われたら、無論、

「Next one is better one!」

とだけ答えます。