東京コミュニティスクール(TCS)のバックギャモン授業レポート(2024年12月)
2025年2月3日

 2024年12月18日(水)、東京コミュニティスクール(TCS) において、記念すべき第1回目の小学生向けバックギャモン授業を開催しました。この授業は、TCSの学びの可能性をさらに広げていく取り組みとして、日本バックギャモン協会が主催したものです。

 TCSは、中野駅から徒歩10分の便利な立地にあり、1学年の児童数が最大9名という少人数制のマイクロスクールです。同校の教育理念である「自和自和(じわじわ)」は、「自分らしさを活かし、人や社会や自然とのつながりを楽しみながら成長する」ことを目指しています。この理念のもと、TCSでは子どもたちが主体的に学び、他者との協力を楽しむ教育環境を提供しています。「自和自和」の考え方を具体的に体現するプログラムのひとつが「テーマ学習」です。この学習プログラムは、自主自律、社会寄与、意思表現、共存共生、時空因縁、万象究理の6つの探究領域に基づき、各学年でこれらに関連するテーマを設定し、教科を融合させつつ、また実体験を通じて学びを深めています。このテーマ学習を通じて、子どもたちは多角的な視点を養い、実社会で必要なスキルや知識を副次的に身につけていきます。TCSではテーマ学習の中で算数の要素に触れたり取り組んだりするケースがありますが、教科としてもカリキュラムを組んでおり、約10年前からその教材の一つにバックギャモンを活用しています。スクールではバックギャモンボードを10台ほど保有しており、数の感覚を養うために授業で使用してきました。しかしながら、これまでの取り組みでは戦略的な部分まで踏み込んで指導ができていないという課題があり、同校のスタッフからバックギャモンのさらなる魅力を子どもたちに伝えたいとの相談を受けたことが、今回の特別授業のきっかけとなりました。

 授業の企画は春頃から始まりました。1・2年生には「普通のバックギャモンのルールに沿ってプレイができるようになる」ことを、3・4年生には「自分でしっかりと考えながらプレイできるようになる」ことを、5・6年生には「論理的思考に基づいたプレイができるようになる」ことをそれぞれ最終目標として、授業の内容を決めていきました。またこの授業は、「自和自和」の理念を体現する場として、ゲームを通じて論理的思考力や意思決定力を養い、他者との協力や戦略的な考え方を学ぶことを目指しています。この授業を通じて、子どもたちが自ら考え行動する力を高め、社会や自然とのつながりを深めていくことを期待しています。


■ 授業内容

 初回の授業は、バックギャモンの楽しさを伝えながら、子どもたちの好奇心を育むことを目的としました。

 1・2年生、3・4年生、5・6年生の3つのグループに分け、それぞれ90分の授業を行いました。授業の冒頭では、クイズを取り入れながらバックギャモンの魅力や歴史を紹介し、児童たちの興味を引きました。その後、基本ルールを7つに絞って説明しましたが、児童たちはこれまでのテーマ学習の授業を通じてルールをほぼ理解していたため、今回はその確認を中心に進める形となりました。

図1.おぼえるルールは7つだけ

 次に、1枚のコマと1つのサイコロだけを使う「ひとりぼっちギャモン」でスタートからゴールまでの進行方向を再確認し、ゲーム終盤で重要となる(ものの体験する機会の少ない)ベアオフの練習に特化した「ベアオフギャモン」でベアイン後の基本動作を確認しました。

図2.ひとりぼっちギャモン
図3.ベアオフギャモン

 さらに、初期配置からブロックポイントを連続して作る特訓を行い、相手のアンカーが逃げにくくなる状況に追い込む体験をしてもらいました。長いプライムが形成されると、子どもらからは「すげー!」「最強じゃん」といった感嘆の声が上がりました。

図4.初期配置からブロックポイントを作る特訓
図5.初期配置からブロックポイントを連続で作る特訓

 また、5・6年生には、「リスクを考えよう」という発展的なセクションを追加し、バックギャモンを通じてリスクとリターンの概念について説明しました。初手21を題材にして、「リスクが大きくてリターンが小さい」選択肢と「リスクは小さいがリターンも小さい」選択肢、「リスクが大きいがリターンも大きい」選択肢があることを示し、どの選択肢を選ぶのがよいのかを考えてもらいました。この考え方は単にバックギャモンにとどまらず、現実にも応用できる重要な意思決定スキルとなることを伝えました。

 授業の締めくくりには、児童二人ずつでペアを組んで先生と対戦する時間を設けました。二人で協力しながら先生に勝つために真剣に考える様子が見られ、コミュニケーション力や判断力を養う良い機会となりました。

 そして今回の授業では、過去の小学校バックギャモン教室や聖徳学園小学校での授業の経験を活かし、以下の新たな工夫を取り入れました。まず、A2サイズの特製マグネットボードを制作しました。これにより、児童全員に特定の盤面を見せてコマを動かしながら解説(いわゆる大盤解説)できるようになり、どこかのボードに集まってもらって解説するといった手間がなくなりました。また、ほぼすべてのスライド資料に「右側がゴールの場合」と「左側がゴールの場合」の両方の盤面を併記し、児童が混乱しないようにしました(例えば左に座っている人は左側の図を見るように指示をする)。さらに、初期配置を覚えるための「六つ子のばあさん」という語呂合わせを新たに考案しました。この語呂合わせは子どもたちに非常に好評で、笑顔で繰り返し口にする姿が微笑ましかったです。

図6.初期配置の語呂合わせ

■ 授業の様子

 最初の授業は3・4年生でした。この年頃の子どもたちは活発で、話を聞かずにサイコロを振ったりする場面も見られましたが、しかしそれ以上にゲームに夢中になる姿が印象的で、バックギャモンの魅力を改めて感じさせてくれるものでした。

図7.授業風景(3・4年生)
図8.授業風景(3・4年生)

 次に行った5・6年生の授業では、高学年らしい落ち着きが見られました。いろいろな局面での理解も早く、リスクについての追加セクションもしっかりと理解できている様子が見られました。実戦では、サイコロの目に一喜一憂しつつも状況を考えて手を打っている姿が見られ、バックギャモンを通じてリスクとリターンの概念を実感してもらうことができた点は大きな成果だと感じました。

図9.授業風景(5・6年生)
図10.授業風景(5・6年生)

 午後からの1・2年生の授業では、「ひとりぼっちギャモン」や「ベアオフギャモン」を念入りに練習させ、遊び感覚でルールを定着させることを目指しました。予想以上にこちらの話をよく聞き、集中して取り組んでくれました。3・4年生とほぼ同じカリキュラムでしたが、1年生でも十分に理解ができていたのには驚きました。直近のTCSの授業でブロックポイントの練習をしていた成果が出たのかもしれません。

図11.授業風景(1・2年生)
図12.授業風景(1・2年生)

 90分という長丁場の授業にも関わらずほとんどの児童たちが集中して授業に参加しており、「もっとやりたい」という声が多く上がるなど関心の高さを感じることができました。モチベーションと達成感を高めるために用意したご褒美のシールと受講証も好評で、特にシールはとても効果的でした。今後の授業でも、このような仕掛けを引き続き活用していきたいと思います。

図13.授業で配られた受講証

 TCSではすでにバックギャモンの基本ルールを理解できている児童が多く、1回目の授業から少し発展的な内容を取り入れることができました。しかしいくつかの課題も明らかになりました。早めにコマやサイコロを与えると勝手に遊んでしまう傾向が見られました。また、個人差により待ち時間が発生し、退屈する児童もいました。試合の始め方やマナーについてのレクチャーが不足していた側面もありました。これらの点を踏まえ、次回はしっかりと改善していきたいと考えています。


■ 最後に

 今回の授業で最も大切にしたかったのは、子どもたちが「バックギャモンって楽しいな」と感じられる体験を提供することでした。特に、子どもたちが実際に手を動かし、遊びながら楽しめることを重視しました。バックギャモンの魅力が少しでも伝わり、授業の先につながる好奇心の芽を育てられたら幸いです。

 2回目の授業の日程は未定ですが、「達人から学ぶ」という学びのTCSの実践の一環として望月プロに授業に参加していただく予定です。最終回にはバックギャモン大会の開催を予定しており、将来的に将棋大会や百人一首大会と並ぶ恒例のイベントになればと期待しています。TCSが目指す探究学習において、バックギャモンが引き続き子どもたちの成長に貢献できるよう、次回以降の授業内容にもさらに工夫を重ねていきます。また協会としても、この経験を活かして他校への展開を視野に入れたプログラム作りを進めてまいります。

 最後に、東京コミュニティスクールの先生方とスタッフの皆さまに深く感謝申し上げます。TCSの柔軟な教育環境と温かいサポートのおかげで、今回の授業を成功裏に終えることができました。この素晴らしい機会を提供していただいたことに心より感謝し、今後とも共に子どもたちの成長を支える取り組みを進めていけることを願っております。

聖徳学園小学校でのバックギャモン特別授業レポート(2024年2月)
2024年3月25日

 東京都武蔵野市にある聖徳学園小学校にて、今年もバックギャモンの特別授業を実施しました。この小学校では50年以上前から、1年生から4年生の授業に「知能訓練」と呼ばれるパズルやゲーム等の遊びを通したユニークなレッスンが組み込まれており、その一環としてオリジナルルールのすごろくやバックギャモンが取り入れられています。考える力を養うのに最も効果的な時期が10歳までというのがその教育理論にあるそうですが、ようやく最近になって、イギリスの学術誌に掲載されたシステマティックレビュー論文 (*) で「数字ベースのボードゲームを遊ぶことにより、3歳から9歳の子どもの数学的スキルが著しく向上すること」が明らかになったことを考えると、半世紀以上前からこういった先進的な教育を実践しているのは本当に驚きです。また個人的には、自分が小学生の頃にゲームを使ったワクワクする授業があったならどれほど楽しかっただろうと羨ましい限りです。

 さて今回の特別授業では、望月・横田・来住野ら4名のメンバーが4年生の2クラス同時に90分の授業を担当しました。授業の冒頭で、「バックギャモンで運を活かせる人になろう」と題した25分の講義をおこない、バックギャモンを通して身につく「数学的スキル」と「運に左右されないねばり強さ」を中心にバックギャモンの魅力を伝えました。講義の制作にあたっては、小学生教室の担当者と協力して、子どもが飽きずに興味を持てるような参加型のコンテンツを準備しました。

 その後は、実際にバックギャモンをプレイしてもらいました。バックギャモンボードは小さいながらも一学年60数名が全員対戦できる台数が学校側で用意されており、先生が事前に遊び方を指導してくださったこともあって、児童たちはルールをきちんと理解してスムーズに対戦に臨むことができました。なお前回までと同様に、各クラス2名ずつの先生がペアになった児童たちと二面指しで対局し、対局を待っている児童同士が一対一でプレイするというスタイルを採りました。真剣にあれこれ考えたり、相談しながら熱心に戦略を練ったりする姿を見るにつけ、バックギャモンが単なるゲームではなく、思考力や協調性を育む教育的ツールとして十分活用され得ることを再確認することができました。担任の先生によると、当日の児童たちの挑戦欲や学ぶ意欲が予想以上に強かったとのこと。世界チャンピオンが来るということで「勝ってやろう!」と気合が入っている児童も多数いたようです。結果として、4組のペアがプロに勝利し、教室は大盛り上がりとなりました。

 当協会による聖徳学園小学校での特別授業は今年で3年目になりますが、今回も教育ツールとしてのバックギャモンの魅力を再認識する機会となりました。授業の実施にご協力いただいた聖徳学園小学校の先生方に感謝の意を表します。教育現場でのゲームの活用は、リスクに正しく立ち向かう能力や長期的な目線でやり抜く力の重要度が高まっている現代において、今後ますます注目されていくでしょう。当協会としても「公教育ツールとしてのバックギャモンの普及を進める」というビジョンを実現できる機会をもっと増やせるよう今後も尽力してまいります。また、未来の世界チャンピオンが聖徳学園小学校の卒業生から輩出されることを願っています。

 日本バックギャモン協会では、教育機関・企業・各種団体を対象に、出張授業や講演会、講習会を開催しております。ご興味のある方は当協会までお問い合わせください。

*: Balladares, J., Miranda, M., & Cordova, K. (2023). The effects of board games on math skills in children attending prekindergarten and kindergarten: A systematic review. Early Years, 1-25.

授業の様子についてはこちらの動画をご覧ください。

バックギャモン出張授業 in 聖徳学園小学校
バックギャモン出張授業 in 聖徳学園小学校 (ハイライト)
聖徳学園小学校長先生からのメッセージ

小学生教室 第4回「AI について考えよう」開催レポート(2023年7月)
2023年8月21日

 第4回 バックギャモン小学生教室の授業テーマは「AIについて考えよう」でした。前半はAIの基礎やバックギャモンAIの歴史を楽しく学ぶ座学、後半はChatGPTのデモンストレーションを通して学ぶ体験型授業のスタイルを採りました。講師は現在AIの研究をしており、最近では「生成AI」の試験にも合格したこともあって、今回は特に気合を入れて臨みました。

  • パート1: AI のひみつクイズ
  • パート2: バックギャモンと AI
  • パート3: ChatGPT で遊ぼう
  • パート4: ChatGPT の問題点

 パート1は「AIはいつ生まれた?」(ちなみに答えは1956年)などといったクイズからスタートし、パート2ではバックギャモンとAIの歴史について学びました。バックギャモンAIの歴史は古く、1979年にはハンス・ベルリナーが開発したバックギャモンAI「BKG 9.8」が当時の世界選手権に優勝したルイジ・ヴィラに初勝利したという記録が残っています。ちなみに当時の棋譜をXGで解析してみると、世界チャンピオンのPRが「6.50」(エキスパート)だったのに対してAIは「13.99」(中級)とのことでした。7ポイントマッチ1試合のみのエキシビションだったとは言え、チェスAIが世界チャンピオンに初勝利したのが1996年、将棋AIがプロ棋士に勝利したのが2013年ということを考えると、バックギャモンAIの研究が古くから進んでいたことがわかりますね。そのおかげもあって、今では4人に3人がソフトウェアを使って勉強していると回答するなど(2017年のアンケートより)、バックギャモンAIがプレイヤーに広く浸透しています。

「バックギャモンAI の歴史」(授業スライドより)

 パート3では、事前に調べておいた面白い回答をしてくれる質問をChatGPTに答えてもらい、そのスゴさを体験してもらいました。最後には、ChatGPT の問題点や実践的な使い方などを披露しました。今回の授業は大人でも十分楽しめる授業になったのではないかと思います。

授業風景。ChatGPT から予想外の回答が返ってくることも

 小学生教室では、単にゲームを遊ぶだけでなく、「運とは何か考えてみよう」「自分で考えた新しいルールで遊んでみよう」「海外の小学生と対戦してみよう」といったバックギャモンを利用したさまざまなカリキュラムをインタラクティブな体験学習で提示することで、子どもたちの好奇心を育てる創造教室を目指します。

【お申込み・お問い合わせ】
事前申し込みが必要です。下記フォームからお申し込みください。
http://classroom-entry-form.backgammon.or.jp

ご質問等ございましたら、担当の横瀬宛にお気軽にお問い合わせください。
support@backgammon.or.jp(担当:横瀬)

横瀬 明仁

小学生教室 第3回「サイコロを科学しよう」開催レポート(2023年4月)
2023年4月27日

 子どもたちの好奇心を育てるバックギャモン小学生教室、第3回の授業のテーマは「サイコロを科学しよう」でした。パート1は「サイコロはいつどこで生まれた?」「サイコロが使われた有名なセリフ『サイは○○○○○』とは何?」といったクイズからスタート。「ツタンカーメンの墓から象牙のサイコロが見つかった」「昔の天皇もサイコロで遊んでいた」などのウンチクを付け加えながら進めていきます。

  • パート1: サイコロクイズ
  • パート2: サイコロの秘密
  • パート3: サイコロの秘密をゲームで体感してみよう

 パート2では「サイコロの秘密」を紹介し、それが本当かどうか、たくさんのサイコロを使って調べていきました。「表と裏の数字を足すと6」というのはよく知られていますが、サイコロに「オスとメスがある」のはご存知でしたか?

「サイコロにはオスとメスがある」(授業スライドより)

「1・2・3を正面に向かせて反時計回りになるのがメスで、時計回りになるのがオス」でほとんどが「メス」らしいのですが、実際に調べてみると(百円ショップのサイコロが多かったのが原因なのか)、用意した50個のサイコロのうち「約6割がオス」でした。意外な結果に私もビックリでした。やってみないと分からないものですねぇ。

たくさん用意したサイコロをひとつずつ調べていく

 それぞれの面が出る確率が均等になっているか、プレシジョンダイスとおもちゃのサイコロを比較してみる実験では、最後に大学レベルの統計学の手法を使ってイカサマかどうかを検証しました。ほかにも、自作のプログラミングを披露したりしながら、サイコロにまつわるさまざまな面白エピソードを紹介できたと思います。サイコロは確率・期待値思考を身につけるための重要なツールになるので、今後の学びのきっかけにしてもらえれば嬉しいです。

実験の結果をホワイトボードに書いていく

 小学生教室では、単にゲームを遊ぶだけでなく、「運とは何か考えてみよう」「自分で考えた新しいルールで遊んでみよう」「海外の小学生と対戦してみよう」といったバックギャモンを利用したさまざまなカリキュラムをインタラクティブな体験学習で提示することで、子どもたちの好奇心を育てる創造教室を目指します。

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横瀬 明仁

小学生教室 第2回「リスクについて考えよう」開催レポート(2023年3月)
2023年3月27日

 2月から開催された「バックギャモン小学生教室」ですが、第2回となる今回は、バックギャモンをやる上で切っても切れない「リスク」をテーマとして取り上げました。

  • パート1: 「リスク」って何だろう?
  • パート2: リスクをゲームで体感してみよう
  • パート3: リスクとリターンの関係
  • パート4: 日常にひそむリスクとリターン
  • パート5: リスク対策を考えよう
  • パート6: オリジナルのリスク体感ゲームを考えてみよう
オリジナルのリスク体感ゲームからスタート

 冒頭で、ある条件を満たすとシールをすべて失ってしまう「ドボン」ルールがある「シール倍々ゲーム」と「サイコロ振って1から4はシールがもらえるぞゲーム」を体験してもらい、チャレンジするかしないかというドキドキを味わってもらいました。リスクの向こう側には「もっとたくさんのシールがもらえる」というリターンが待っています。リスクとリターンをセットで考えようというのが今回伝えたかった重要なポイントでした。このゲームが盛り上がったこともあって後半の内容がだいぶ駆け足になってしまいましたが、これも小学生教室の醍醐味ですね。

毎回配られる受講証はシールでいっぱい

 授業の中でも言及しましたが、バックギャモンは「どこかでリスクを冒さないといけないゲーム」です。リスクとリターンという不確定要素を天秤にかけながら決断を繰り返していくバックギャモンは、リスクに正しく立ち向かうための「リスク対応力」を鍛えることができる教育ツールだとも言えるでしょう。こういったバックギャモンの魅力や面白さを次回以降も伝えていきたいと思います。

バックギャモンは「どこかでリスクを冒すゲーム」(授業スライドより)

 小学生教室では、単にゲームを遊ぶだけでなく、「運とは何か考えてみよう」「自分で考えた新しいルールで遊んでみよう」「海外の小学生と対戦してみよう」といったバックギャモンを利用したさまざまなカリキュラムをインタラクティブな体験学習で提示することで、子どもたちの好奇心を育てる創造教室を目指します。

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事前申し込みが必要です。下記フォームからお申し込みください。
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support@backgammon.or.jp(担当:横瀬)

横瀬 明仁

小学生教室 第1回「運について考えよう」開催レポート(2023年2月)
2023年3月4日

 いよいよスタートした「バックギャモン小学生教室」。記念すべき第1回は、バックギャモンを面白くする大きな要素である「運」をテーマとして取り上げ、次のように授業を進めました。

パート1: 「運」ってそもそも何だ?
パート2: 「運」についてもっと考えてみよう
パート3: 「運」を体験してみよう
パート4: 「大数の法則」から学ぶ
パート5: 思考トレーニングをしよう
パート6: オリジナルの「運ゲー」を考えてみよう

 今回の見せ場は「偶然は回数が少ないうちは確率通りにならないが、回数が増えれば増えるほど本来それが起こる確率に近づいていく」という「大数の法則」を実感してもらうことでした。そのために一人ひとりに何度もサイコロを振ってもらい、平均が「3.5」に近づいていくかどうか実験をしました。途中、私の自作プログラムに10,000回じゃんけんをさせて、結果が4,900勝から 5,100勝の間にほぼ収まるというのを見てもらう流れだったのですが、みんなプログラミングに興味津々で授業があらぬ方向へ脱線してしまいました(笑)。

先生自作のじゃんけんプログラムに興味津々

 最後はオリジナルの「運ゲー」を考案する時間に充てたのですが、意外と面白いゲームが生まれたのでここで披露させてください。名付けて「協力足し算ベアオフ」です。遊び方としては下の図のようにコマを初期配置し、サイコロを1つずつ持ったペア同士でベアオフ対決をします。

「協力足し算ベアオフ」の初期配置

2つのサイコロの目の合計が「5」だったら「5」ポイントのコマを1つベアオフできるのですが、合計が「6」を超えてしまうとベアオフできません(ゾロ目は無し)。コマを全部上げると勝ちなのですが、面白いのは二人の協力プレイ。1人目が「6」を出したら、2人目がサイコロをぶつけて目を変えることができるのです! これがめちゃくちゃ盛り上がりました。 子どもの発想ってすごいなあと感心しきりでした。次回以降も、生徒と一緒に楽しみながら教室を盛り上げていきたいと思います。

生徒たちと一緒に考えたオリジナルゲームで遊ぶ

 小学生教室では、単にゲームを遊ぶだけでなく、「運とは何か考えてみよう」「自分で考えた新しいルールで遊んでみよう」「海外の小学生と対戦してみよう」といったバックギャモンを利用したさまざまなカリキュラムをインタラクティブな体験学習で提示することで、子どもたちの好奇心を育てる創造教室を目指します。

【お申込み・お問い合わせ】
事前申し込みが必要です。下記フォームからお申し込みください。
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ご質問等ございましたら、担当の横瀬宛にお気軽にお問い合わせください。
support@backgammon.or.jp(担当:横瀬)

横瀬 明仁

聖徳学園小学校にてバックギャモンの特別授業を行いました
2023年2月26日

 寒さが少し和らいだ2月下旬、東京都武蔵野市の聖徳学園小学校にて、望月、横田、横瀬の3人がバックギャモンの特別授業を担当し、4年生の児童30人にバックギャモンの面白さを伝えてきました。今回の授業は昨年に続いて2回目となります。

 聖徳学園小学校では「知能訓練」と呼ばれるパズルやゲーム等の遊びを通した授業を1年生から4年生まで毎週1回ずつ行っています。これは、考える力を養うのに一番効果的な時期が幼少期の10歳までという知能教育理論に基づいているそうです。その知能訓練の中で従来からバックギャモンが使われていたこともあって、昨年インストラクターによる特別授業が実現しました。その後、学園からバックギャモンボードを10数台購入いただき、児童たちが継続的に楽しめる体制を整えていただきました。担任の砂廣先生が事前に遊び方を教えてくれており、児童30人は全員、(初期配置や回り順が覚束ない人もいるものの)ルールを説明することなく遊び始めることができるようになっていました。

 今回の授業では、冒頭でバックギャモンの歴史や文化についてスライドで説明した後、望月と横田がそれぞれ、ペアになった児童全員と二面指しで順番に対局しました。対局を待つ間は、児童同士で対戦してもらいました。ほとんどがルールを覚えたての初心者でしたが、中には相手を待つ間にじっくりと考えを巡らせている児童や戦略性をきちんと理解している児童もいました。最終的に、望月からは2組のペアが、横田からは1組のペアが勝利を上げることができ、まわりから拍手喝采を浴びていました。惜しくも負けてしまった児童も、世界トップクラスのプレイヤーから直接教えを受けることができたことは貴重な経験になったことでしょう。世界選手権優勝の大きなトロフィーを見て子ども達の目が輝いていたのも印象的でした。

 この特別授業を通じて、児童たちはバックギャモンの魅力を改めて知ることができたのではないでしょうか。協会としても「公教育ツールとしての普及を進める」というビジョンを実現できる機会を増やせるよう今後も尽力してまいります。最後に、特別授業の実施にご協力いただいた聖徳学園小学校の先生方に改めて御礼申し上げます。